日本肺胞蛋白症患者会

肺胞蛋白症について

どんな治療を受けるのでしょうか

医師はどのような治療をするのでしょうか?

自己免疫性肺胞蛋白症の治療

自己免疫性肺胞蛋白症の多くは、ゆっくりと進行するか、不変か、あるいは治療しないまま自然によくなります。希に急速に進行する症例もあります。進行する例は治療が必要です。
安静にして、仰向けに寝て5分経ったときに動脈から血液を採って測る動脈血液中の酸素分圧で病気の進行具合がわかります。酸素分圧は、健康な人は、大体80 ~100 mmHg (ミリメートル水銀柱)あります。

病気の進行具合
            

動脈の中の酸素分圧

70mmHg以上 軽症者です。肺胞蛋白症があっても、3~6ヶ月おきに受診して、病気が進行しないかをチェックしてもらうだけで、積極的な治療はしなくてもよいでしょう。
60~70mmHg 中等症です。ただちに危険な状態ではありませんが、治療を計画する段階です。主治医は、GM-CSF吸入療法(後述)や肺洗浄療法をするかどうか、考えると思います。
50~60mmHg サーファクタントが肺胞にどんどん貯まっていく状態で重症です。治療を受ける必要があります。呼吸不全といって、肺からの酸素の取り込みがうまくいってません。通院治療の場合は、在宅酸素療法を受けてください。酸素が低い状態のまま放っておくと、心臓に負担がかかり、赤血球の数が増え、合併症がでやすくなります。
50mmHg未満 超重症の患者さんです。他の肺の病気と違ってこれだけの低酸素になっても、患者さんは息苦しさを訴えないこともあります。しかし、危険な状態であることには変わりはないので、できるだけ早くに治療を受けてください。

治療法

(1)全肺洗浄法

全身麻酔をかけて、二股に分かれた特殊なチューブを口から気管に入れ、右の気管支と左の気管支にチューブの先端をおきます。右の肺を洗うときには、左気管支のチューブは人工呼吸器に繋ぎ人工的に空気を入れたり出したりして呼吸を助け、右の気管支に繋がるチューブには、生理食塩水のボトルに繋げます。

「左右分離用二腔気管チューブ」…左の肺を洗浄する場合は、左の主気管支にチューブの先端を進め、左気管支用カフを膨らませます。洗浄するときは、チューブの中程にある穴から空気を出し入れし、左主気管支に留置した左気管支チューブの先端から生理食塩水を左肺に注入・回収を繰り返します。
詳しくは「肺胞蛋白症に対する全肺洗浄法について」のページをご覧ください。

全肺洗浄を行っている赤坂圭一先生(さいたま赤十字病院)
洗浄を20回繰り返した洗浄液
(2)GM-CSF吸入療法

顆粒球マクロファージコロニー刺激因子吸入療法(GM-CSF:商品名Leukine)を生理食塩水に溶かし、ジェットネブライザーとか膜型ネブライザーと呼ばれる吸入器を使って15~20分の吸入を毎日2回行います。これを1週間続けて、1週間休みます(吸入をしない日が1週間あります)。このサイクルを12回繰り返します。つまり、全部で24週間治療します。この治療は、現在は、まだ保険診療になっておらず、この治療を希望される患者さんは、医師の個人輸入により、海外からGM-CSFを輸入してもらって、投薬を受けるしかありません。

吸入器(パリLCスプリントスターネブライザー)(左)
GM-CSF吸入療法を行っているところ(右)

GM-CSFは、ノーベルファーマ社から発売の予定ですが、まだ厚生労働省による承認を得ていません。承認は2023年第3四半期になる見込みです。
(関連リンク)Leukine吸入療法のお知らせ

以下は、主として研修医向けページです。