日本肺胞蛋白症患者会

肺胞蛋白症について

肺胞蛋白症はどんな病気ですか?

肺胞蛋白症は、気管支の奥につづく「肺胞」と呼ばれる小さな袋に「サーファクタント」という物質が異常に貯留して、空気中の酸素が血液に取り込まれにくくなる病気です。

みなさんのご理解を助けるために、肺の構造と呼吸のしくみについて説明します。

肺の構造

肺は、吸った空気中の酸素を血液中に取り込み、体の中で出来た炭酸ガスをはいた息に排出するための大事な臓器です。鼻や口から入った空気は、気管を通って胸の真ん中あたりで、左右に分かれ、さらに分かれて、分かれてという分岐を繰り返し、最後に直径が150ミクロン(0.15 mm)くらいの肺胞と呼ばれる袋に繋がっています。肺胞の周囲は図に示すように無数の毛細血管が張り巡らされており、肺胞の中に入った空気中の酸素は、薄い肺胞の壁を通過して毛細血管の中を流れる血液に入っていきます。
肺胞の薄い壁は、ゴムまりのように弾力性があって、空気が出入りするたびに膨らんだり縮んだりしてます。この弾力性のもととなっているのが、肺胞の内側を覆っている「サーファクタント」という粘液の表面張力です。この表面張力がないと肺胞が膨らむことが出来ず、十分な呼吸ができなくなります。

サーファクタントは、Ⅱ型上皮と呼ばれる肺胞の内側に飛び出している細胞が造り、肺胞の内側に放出されます。その一方、サーファクタントは、肺胞の中にあって、サーファクタントの上を滑るようにパトロールしている肺胞マクロファージという細胞に取り込まれて分解消化されます。このサーファクタントの産生と分解は、健康な人の肺では絶妙なバランスが取れていて、サーファクタントは、多からず、少なからず、肺胞の内側を覆うのに十分な量だけ存在しているのです。

サーファクタントの貯留イメージ
(肺胞蛋白症患者の肺胞を覗いたときの想像図)
うすいクリーム色がサーファクタント

ところが、何らかの原因で、サーファクタントが異常に肺胞の中に貯まると肺胞蛋白症になります。
このサーファクタントが過剰に貯まると、酸素は血液の中にスムーズに入って行きません。このため、肺胞蛋白症が進むと息切れが起こり、さらに進むと呼吸不全と呼ばれる在宅酸素療法が必要な状態となります。

サーファクタントが肺胞の中にたまる原因

サーファクタントが過剰に貯まってしまう原因としては、サーファクタントそのものが異常な場合とサーファクタントを分解する肺胞マクロファージという細胞の異常が知られています。ほとんどの肺胞蛋白症は、この細胞の異常から起こることが知られています。

            
全体に占める割合
サーファクタントを分解している肺胞マクロファージが自己抗体により機能障害になる病気
自己免疫性肺胞蛋白症と言います。肺胞蛋白症の92%を占め、抗GM-CSF自己抗体という抗体が原因です。
サーファクタントを分解している肺胞マクロファージが異常な細胞に置き換わる病気
続発性肺胞蛋白症と言います。肺胞蛋白症の7%を占め、骨髄異形成症候群や白血病などの血液疾患に合併する病気です。
分解されにくい異常なサーファクタントが造られる場合、細胞内のサーファクタント輸送が異常な場合、サーファクタントを分解する肺胞マクロファージを活性化するGM-CSFが結合する受容体が異常な場合など。
これらは全て遺伝子の異常により起こる遺伝性肺胞蛋白症です。肺胞蛋白症の1%を占め、遺伝性肺胞蛋白症といいます。