日本肺胞蛋白症患者会

医療費について

高額療養費制度(限度額適用認定)について

医療費への支払いが多すぎて困ったときは-高額療養費助成制度について

高額療養費制度とは、1カ月(同じ月の1日から末日まで)の病院または薬局での支払いが自己負担額を超えた場合、その超えた分が払い戻される制度です。申請すれば誰でも払い戻しを受けることができ(指定難病助成制度に申請していなくてもOKです)、年齢や所得に応じた限度額が設定されています。ただし、個室料金や食費、先進医療などは支給の対象になりません。

高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効は、診療を受けた月の翌月の初日から2年です。したがって、この2年間の消滅時効にかかっていない高額療養費であれば、過去にさかのぼって支給申請をすることができます。
高額療養費の支給申請の際には領収証の提出が必要ですので大切に保管しておきましょう。必要書類は領収証・保険証・印鑑・振込口座のわかるものです。

たとえば「管理区分重症度2」の患者さんが全肺洗浄手術を受けると、月の病院または薬局での支払いが保険を使っても50万円以上になりますが、保険者に申請すると、この制度によって一定額(例として8万円)を超える分について戻ってきます。
病院の支払い窓口で一旦支払っていただき、あとから医療費が戻ってくる制度です。
あるいは、あらかじめ「限度額適用認定証」利用の手続きをすると病院窓口での支払いが自己負担限度額になります。
高額医療費は払い戻しまで時間がかかりますので(通常 診療月から3~4カ月後)、限度額適用認定証がおすすめです。

また、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関では、限度額適用認定証がなくても窓口での支払いを自己負担限度額までとすることができます。

そのためには、マイナンバーカードを健康保険証として利用するための登録が必要です。
利用登録は以下の方法で行えます。

  • 医療機関にある顔認証付きカードリーダーの画面上
  • ご自身のスマートフォンなどを使用したマイナポータルアプリ
  • 市町村の窓口
  • セブン銀行のATM

健康保険証として利用登録を完了していれば、限度額(高額療養費)の情報を取得できます。

※限度額(高額療蓑費)情報をまだ紐づけていない保険者については、限度額(高額療養費)の情報を取得できません。そのため、引き続き従来どおりの手続き(紙の限度額適用認定証の提示)が必要です。
※限度額適用認定証の交付手続きが必要なのは70歳未満の人のみで、70歳以上の人は自動的に支払いが限度額までとなります。

高額療養費自己負担額の例

例をあげて、説明します。
たとえば、自己免疫性肺胞蛋白症の診断を受け、「管理区分重症度2」の患者さんが、全肺洗浄術をある病院で受けて、1カ月の総医療費(10割)が100万円だったとします。その患者さんは69歳以下で、国民健康保険に加入していて、年金などの年収約400万円だったとします。
表3−2を見ますと、ウに相当するわけですね。
ウのひと月の自己負担限度額は、80,100+(1,000,000円-267,000)×1パーセント=87,430円です。

つまり、病院支払い窓口で払う医療費は、30万円なのですが、高額療養費制度を申請すると、300,000-87,430=212,570 円 戻ってきます。

表3をご覧になり、ご自身の年収に照らし合わせて、ひと月の医療費支払いが30万円だった場合にどれくらいになるかを計算してみてください。払い戻しの手続きの仕方は、このあとに書いてある手続き方法をご覧ください。このように、高額療養費制度を活用すれば、そんなに大金を持っていなくても高度な医療を受けられる仕組みになっているのです。

表3-1:【69歳以下の方】高額医療費制度で定められているひと月あたりの自己負担上限額
※総医療費とは診療費用の総額(10割)です
表3-2 :【70歳以上の方】高額医療費制度で定められているひと月あたりの自己負担上限額
※総医療費とは診療費用の総額(10割)です
  • 過去12か月以内に3回以上、自己負担限度額に達した場合、4回目以降は多数該当となり自己負担額が引き下げられます。

次にこの患者さん(自己免疫性肺胞蛋白症重症度2の患者さん)が6,8,10月に3回全肺洗浄術を受けたとして、その月の支払いがそれぞれ自己負担額の上限を超えていて、高額医療費制度に申請し、払い戻しを受けていたとします。その後12月にまた全肺洗浄術を受けたとします。1年間の間に4回の高額療養費が支払われた場合は、4回目が多数回に該当するので自己負担額の上限が引き下げられます。(表3−1のウの右の欄をご覧ください)44,400円が自己負担額の上限です。その12月の医療費が100万円だったとすると、病院窓口での支払いは、30万円ですが、高額医療費制度を申請すると、300,000-44,400=255,600 円戻ってきます。大きいですよね。

図2:高額療養費多数該当適用例
医療機関にかかって12カ月の間に同一世帯で3回以上高額療養費が支給された場合、
4回目以降からはさらに自己負担限度額が引き下がります《多数該当》
12018年12月:〈多数回に該当〉
直近12カ月間(2018年1月〜2018年12月)に3回以上高額療養費が支給されているため、2018年12月は多数回に該当する。
22019年8月:〈多数回に該当しない〉
直近12カ月間(2018年9月〜2019年8月)に2回しか高額療養費が支給されていないため、2019年8月は多数回に該当しない。
32019年9月:〈多数回に該当〉
直近12カ月間(2018年10月〜2019年9月)に3回以上高額療養費が支給されているため、2019年12月は多数回に該当する。
42019年11月:〈多数回に該当〉
直近12カ月間(2018年12月〜2019年11月)に3回以上高額療養費が支給されているため、2019年11月は多数回に該当する。
高額療養費制度の対象範囲
  • 同一の医療機関で受けた治療費の自己負担額が合計21,000円以上の場合のみ算出(70歳以上の場合は、21,000円未満でも合算可能)
  • 同一の医療機関で受けた治療の場合も、入院治療と外来治療はわけて計算します。
  • 同一の医療機関で受けた治療の場合も、医科と歯科はわけて計算します。
  • 病院で交付された処方箋を使い、院外の薬局で薬を受け取った場合、処方箋を出した病院の自己負担額分に合算します。

【例】
 A病院(入院)100,000円
 B病院(歯科) 5,000円 ※
 C病院(内科)23,000円

※この場合、B病院(歯科)は21,000円を超えていないため、対象となりません。
 A病院とC病院の自己負担額を足した123,000円をもとに計算することになります。

同一の公的医療保険制度に加入している家族は、総額の医療費の自己負担額を世帯ごとに合算することが可能です。

世帯・同一人合算

高額療養費は、同一世帯や他の医療機関で支払った医療費を合算して申請することができます。
世帯合算とは、同一世帯の者が同じ月に自己負担限度額を超えた場合に合算して申請できるものです。
同一人合算は、本人が同じ月に複数の医療機関に自己負担限度額を超える医療費を支払った場合、それらを合算して申請できるものです。

※高額療養費は暦月単位で計算されるため、月をまたいで治療した場合は、自己負担額の合算はできません。
※75歳以上は後期高齢者医療制度の対象となり、世帯内の若年者とは制度体系が異なるので、合算できません。75歳以上同士なら合算できます。

【参考】高額療養費 計算ツール
https://www.gcdental.co.jp/member/hoken/chap10/contents1007.html
(株式会社ジーシーのWEBサイトへ移動します)

次に高額療養費制度の手続き方法について説明します。

手続き方法

(1)事後に手続きする場合(高額療養費を支給申請する場合)

医療機関等の窓口で医療費の自己負担分をいったん支払い、後日加入している保険者(健康保険組合、協会けんぽ(全国健康保険協会)、共済組合、国民健康保険など)に申請して、払い戻しを受けます。

申請窓口

ご加入の保険者によって異なりますので、保険証に記載されている保険者にお問い合わせください。
国民健康保険の場合は、市区町村または国保組合により異なりますので、お住まいの国民健康保険担当窓口または国保組合へご確認ください。

  • 全国健康保険協会→協会けんぽ支部
  • 健康保険組合→職場・保険証に記載されている健康保険組合
  • 共済組合→職場・保険証に記載されている共済組合
  • 国民健康保険→市役所・区役所
  • 後期高齢者医療→市役所・区役所

となります。

国民健康保険に加入していると、高額療養費に該当する世帯に、診療月の概ね3カ月後の上旬に保険者から「国民健康保険高額療養費支給申請書」が届きます。申請の時効は、支給申請書の到着から2年となります。

送付された申請書に必要事項の記入と、病院窓口で支払った額の領収書、薬局での領収書がある場合はその写しを添付して申請してください。70歳以上の人の外来分については、添付をしなくてもかまいません。

(2)事前に手続きする場合 (「限度額適用認定証」を利用する場合)

外来・入院に関わらず、事前に「限度額適用認定証」を申請すると、窓口での支払を自己負担限度額までにとどめることができます。

ご自身が加入している保険者(健康保険組合、協会けんぽ(全国健康保険協会)、共済組合、国民健康保険など)に申請すると交付される認定証です。

受診時に医療機関等の窓口に提示すると、支払を自己負担限度額までにとどめることができ、高額な医療費を一時的に立て替える必要がなくなります。

自己負担限度額を超えるかどうかわからない場合でも、限度額適用認定証を支給申請しておくことができます。

申請窓口

各保険組合で用意している限度額適用認定申請書を用意し、各保険組合に申請します。

【協会けんぽ】
協会の各都道府県支部にお問い合わせください。
WEBサイトから申請書のダウンロードができます。
参考
例:限度額適用認定証 申請書ダウンロード
「○○県建築健康保険組合」「日本私立学校振興・共済事業団」などで検索ください。

【健康保険組合】
各組合によって異なりますので、保険証に記載されている健康保険組合にお問い合わせください。

【国民健康保険】
市区町村または国保組合によって異なりますので、お住まいの国民健康保険担当窓口または国保組合へご確認ください。
参考
高額な医療費を支払ったとき:全国健康保険協会Webサイト

限度額適用認定証の発行までの流れ

お持ちの保険証に記載されている区役所、各市区町村役場、全国健康保険協会(協会けんぽ)都道府県支部、健康保険組合へ申請します。

(1)限度額適用認定申請書を記入し、保険証の写しを添付して健康保険組合へ郵送します。

基本的には郵送での申請となりますが、区役所、健康保険組合等の窓口での直接の申請や、勤務先を通して申請を行う場合もあります。

(2)「限度額適用認定証」が交付されます。

自宅又は、職場や入院医療機関等、送付先の指定も可能です。